すると、背中に触れていた柔らかい感触が消え、身体が一瞬浮いた後、全身に強い衝撃が走った。



「いったぁ……」



痛みに顔をしかめながら目を開けると、智が布団を持っているのが見えた。

ぼんやりした頭で思考を整理する。どうやら畳の上にほっぽり出されたようだ。



「何すんのよ! 起こすならもう少し優しくしてよ!」

「うるせぇな。何回声かけても全然起きなかったんだからしょうがねーだろ。早く起きて飯食え」



乱暴に吐き捨てた後、慣れた手つきで布団をたたむ智。

何こいつ……! なんでこんなに不機嫌なの⁉ 起きたばかりの人間に八つ当たりしないでよ!


イライラしつつ、枕元に置いていた時計を手に取る。

えっ……嘘……っ。

慌てて起き上がり、襖を開けた。



「おお、一花ちゃん、おはよう」

「おは、よう……」



居間で新聞を読む祖父と、その足元でくつろぐジョニー。挨拶をして視線を壁掛け時計に移す。


夢、じゃ、ない……。

8時5分を指している時計を見た瞬間、私は二度寝に失敗したことを理解し、呆然と立ち尽くした。