砂浜に描いたうたかたの夢

宥めるも、口がへの字に。

冗談のつもりが、こんなにムキになるなんて。
さっきも睨まれたし、もしかしたらコンプレックス持ちなのかもしれない。

上品さはそのまま、凛々しさを足して描いた。







1時間後。雲間から太陽が出てきたので、そろそろ戻ることに。



「わがまま言ってごめんね。かっこよく描いてくれてありがとう」

「ううん! こちらこそ、協力してくれてありがとう!」



横並びで海岸を歩く。


時刻は5時過ぎ。夕食の時間帯なのもあってか、誰もおらず、海岸には私達2人だけの声が響いている。

恋愛経験が乏しい私にとって、異性と2人きりってだけでドキドキが止まらない。

対して凪くんは……。



「にしても、すごく静かだよね。一緒にヤッホーって叫んでみる?」

「なっ……!」



いたずらっ子みたいな笑顔を向けられ、ボンッと顔の熱が上がる。


智とは違い、嫌味のないからかい方。

慣れてるんだろうなぁ。初めて会った時から全然態度変わってないもん。

2歳差だけど、人生経験は私の倍以上あったりして。