砂浜に描いたうたかたの夢

名前を呼ばれて我に返った瞬間、額にゴンと鈍い音が響き、痛みが走った。



「いったぁ……」

「大丈夫⁉ 怪我はないか⁉」

「はい……」



額を擦りながら、かわちゃんに返事をした。

目の前にあったのはドア。
左には壁、右を見れば、気まずそうに教室を出るクラスメイト。

どうやらドアに激突しちゃったみたい。



「良かった。呼んでも反応ないから心配したぞ」

「すみません。ちょっと考え事してて……」



あははと笑ってみせるも、彼の眉尻は下がったまま。

おかしいな。今まで机にぶつかったり、椅子に足を引っかけたり、似たようなことは何度もあったのに。



「そうか……? 最近少しボーッとしてるように見えるけど……夏バテ?」



ドアに突っ込んだからか、本気で心配している様子。

いいえ、違います。食欲はあるので夏バテではありません。
確かに、連日の真夏日に疲れているのも本当ですけど……。



「……かわちゃんのせいですよ」

「えっ?」

「かわちゃんが変な宿題出すからですっ!」