砂浜に描いたうたかたの夢

お茶を飲み干す父。

……余計なことを教えやがって。

仲間を見つけて盛り上がったのかもしれないけど、勝手にペラペラ話さないでほしい。



「やってるよ。今、自由研究のテーマ考えてる」



落ち着いた口調で答えつつも、湧き上がってきた感情は隠せず。少し乱暴な手つきで冷蔵庫のドアを閉めた。



「そうか。進学校に入ったんだから、ちゃんと計画立ててやるんだぞ」



そう言い残し、洗い物をする母に食器を渡して出ていった。

あぁもう、毎日毎日同じことを何回も。通夜から帰ってきてまで言う言葉かよ。

なんて、思うままに言いたかったけれど……。


口を閉じてジュースをガラスのコップに注ぐ。

うちのお父さんは通る声で、しかも大きく、昔からよく目立っていた。

どのくらいかというと、小学生の頃、運動会のリレーで走ってた時、応援する声がハッキリと耳に届いたくらい。


後日、『一花ちゃんのお父さん、パワフルだったね』と、クラスメイトと先生に口を揃えて言われるのが、私の中での毎年恒例行事だった。

楓が入学してからも、熱量は変わらずで……卒業するまで恥ずかしい思いをしたものだ。