「いえ、こちらこそ。お楽しみのところ、邪魔してしまってすみません。足は大丈夫ですか? 何かに刺されてはない?」

「はいっ。大丈夫ですっ」

「そうですか。なら良かった」



顔を上げると、安堵に満ちた表情が。

すみませんだなんて……謝るのは自分勝手な行動を起こした私。見ず知らずの人に心配をかけた私なのに……。



「もし入るのであれば、誰かに付き添ってもらってくださいね。暗いと、何かあった時に分かりづらいので」

「……はい」



優しい口調で注意を受け、消え入るような声で返事をした。


……申し訳なさすぎる。

頭からつま先まで全身びしょ濡れで、綺麗なお顔と髪の毛に至っては砂まみれ。

対して私は、足と手が少し濡れただけ。謝罪1つでは足りないくらいだ。



「一花……っ!」



せめてものお詫びをと思ったその時、後ろで私の名を呼ぶ声が聞こえた。



「いたいたっ、どこ行ってたんだよ」

「ごめん。夢中になってて」

「ったく、そろそろ帰るぞ」

「う、うんっ」



智が前を歩き出した後、チラッと隣を見る。


何も言われなかったなと思ったら……いつの間に。

辺りを見回しながら海岸を後にしたものの、彼らしき姿は見当たらず。心残りを抱えたまま帰路に就いたのだった。