昼間に比べたらかなり暗いけど、ライトを点ければ中まで見えるかもしれない。

ピントを合わせてシャッターを押したその瞬間。



「やめろーっ! 早まるなーっ!」



後方から制止しようとする声が聞こえた。
振り向くと、1人の男性がこちらに向かって走ってきている。

えっ……もしかして私のこと⁉



「うわっ」

「っだ、大丈夫ですか⁉」



辺りを見回した直後、彼がバシャンと水音を立てて転倒した。

慌てて駆け寄るも……反応がない。というより、全然微動だにしない。

まさか、打ちどころが悪くて気を失ってしまったんじゃ……。



「あの……っ」

「……ぷはっ」



再度声をかけると、ガバッと顔を上げて咳き込みだした。

良かった。意識はあったみたい。



「大丈夫ですか……?」

「はい……」



落ち着きを取り戻し、ゆっくり起き上がる彼。

話を聞くと、私が自死しようとしているのではと思い、急いで呼び止めたのだそう。



「紛らわしいことをしてすみませんでした……っ!」



海岸に戻り、つむじが見えるくらいに深く頭を下げた。