今耳元で、「この人、さっきデブいじりしてきたんですよ!」って暴露してやりたい。

けれど、多分仲直りしようとして電話をかけてきたはずだから。ここは彼女の気持ちを優先して、そっとしておこう。


邪魔にならないよう、少し離れて撮影再開。

うーん、綺麗だけどなんかイマイチだなぁ。ライト消して撮ってみるか。



「わわっ、冷たっ」



すると突然、足元にヒヤッと刺激が走った。

ありゃりゃ。いつの間にか波打ち際に来ちゃってたのか。


顔を正面に戻し、不規則に繰り返す波の音に耳を澄ます。

こう眺めると、夜の海も綺麗だな。

ゆらゆら揺れる水面が月明かりに照らされて、星空とはまた違った魅力がある。



「そうだ、せっかくなら……」



パンツの裾をふくらはぎまでめくり、波が引いた砂浜の上を一歩ずつ進んでいく。

今日はサンダルだし、智もまだ電話してるみたいだし、夜の海を撮ってみよう。


足全体が波に覆われたところで止まり、カメラのレンズを海面に近づける。

祖父いわく、日中は透き通っていてとても綺麗とのこと。