「このクソガキ! レディに向かって失礼でしょ!」

「レディ⁉ 食いしん坊で口が悪いのに⁉」

「口が悪いのはあんたもでしょうが!」

「やめなさい! こんな夜に近所迷惑よ!」



ギャーギャー言い合っていると、母の怒号が飛んできた。



「お父さん食事中なんだから、静かにしなさい!」

「…………」

「…………」



「お母さんの声のほうが大きいよ」と返したかったけれど、さらに怒鳴られそうだったのでグッと呑み込んだ。

口を尖らせて、持っていたアイスを冷凍庫に戻す。


先に喧嘩を売ってきたのは楓なのに。お腹のことも、自覚してるんだからいちいち言うなっつーの。



「一花、アイスもいいが、勉強はしたのか? 夏休みの宿題、もう何個かもらってるんだろう?」



冷蔵庫からジュースを取り出そうとした手が止まり、ピクッと眉間にシワが寄った。



「……誰から聞いたの?」

「職場の先輩。子どもが一花と同じ高校に通ってるって聞いて、教えてもらった。クラスは違うみたいだけどな」