口をへの字の形にして、「俺のほうが生前会ってたのになぁ」と呟いた。


犬をはじめとする動物は、私達人間の何倍も鋭い聴覚や嗅覚を持っている。

凪くんとひいおじいちゃんの姿がハッキリ見えていたかは不明だけれど、じっと見つめていたのならば、何か感じ取っていたのかもしれない。


ひいおじいちゃんはともかく、ジョニーにも改めて感謝しないとな。



「でも、一花ちゃんには俺の姿見えてるからいっか」



空に曾祖父とジョニーの顔を思い浮かべていると、凪くんが距離を縮めてきた。


肩と肩が触れ合うくらいの距離。右を向くと、安心感が漂う笑顔。

だけど、今日は瞳の色に甘さが含まれているように感じて、途端に顔が熱くなる。



「怖く、なかったの?」

「ん? 何が?」

「……海に、入ったの」

「……怖かったよ。最初は、見るのも辛かった」



照れていたらまたからかわれると思い、視線を落としてぎこちなく話を切り出すも。

辛い思い出をよみがえらせてしまったようで、少し罪悪感を抱いた。