だけど──。



「凪くんは、勇敢なライオン、王子様だよ。だって……もし臆病者で意気地なしなら、2度も私を助けたりしない」



幻想的な月明かりに誘われた初日の夜も。風に飛ばされた帽子を追った最後の日の朝も。

凪くんは脇目も振らず、真っ直ぐ私の元に駆けつけてきてくれた。


──それも、親友と自分が亡くなった場所に。



「私ね、岸に倒れてて、ジョニーが第一発見者だったんだって。……もしかして、凪くんが呼んだの?」

「……半分正解」



恐る恐る尋ねたら、見事ビンゴ。といっても半分だったけど。



「帰省中のひいじいちゃん……タダシさんのところに魂を飛ばして、助けを求めたのは本当だよ。でも、ジョニーくんを海まで誘導したのはひいじいちゃんなんだ」

「そうなんだ。凪くんのこと気に入ってたみたいだったから、てっきり凪くんに着いていったのかと」

「あははっ。まぁ、人懐っこかったけど、やっぱり犬の扱いに慣れてる人に比べたら全然。何回呼んでもひいじいちゃんしか見てなかったもん」