悲痛に満ちた家族と親戚の姿に心を痛めたが──現実は残酷で。2日後、追い打ちをかけるように葬儀が行われた。



「浅浜っ、ごめん! 俺が、俺があの時手を離したから……っ」



棺にしがみついて泣き崩れる鋼太郎と、涙目で鋼太郎の背中を擦る桃士。


違う。お前はパニックになった俺を何度も呼び戻そうとしてくれた。

悪いのは取り乱した俺。勝手に手を振りほどいて海に突っ込んでいった俺なんだよ。


俺のために忙しい中時間作ってくれたのに。朝早くから来てくれたのに。

高校最後の夏の思い出も作れなくて、撮った写真も渡せなくてごめん。

──理桜のことも、助けられなくて本当にごめん。


そう声をかけても、何度も謝っても、届くことはなく。抱きしめることも、涙を拭うこともできない。


直視できなくて顔を背けると、その光景を少し離れた場所から眺める祖父を見つけた。

一昨日と同様に目が充血していて、今にも泣き出しそう。



「おじさん!」



会場のあちこちから上がる悲痛の声。

耳にするのが辛くて、一旦会場から離れようとした瞬間、凛々しい顔立ちをした中年男性が祖父の元に駆け寄った。



「これ、使って」

「ありがとう……」



ヒロマサさんと顔の系統が似ている。親戚だろうか。

ハンカチを受け取った祖父は、身内らしき彼に背中を擦られながら涙を拭っていた。