砂浜に描いたうたかたの夢

とはいえ、ずっと俯いたままなのは失礼なので、恐る恐る顔を上げた。



「あの、助かったってことは、何か措置したんだよね?」

「うん。心肺蘇生して、水吐き出させたよ」



叱られた子供が親に向けるような眼差しでぎこちなく尋ねた私に、凪くんはすんなり返答した。


全く動揺しない堂々とした姿。
いかに自分が自意識過剰で、異性慣れしてなさすぎるということを思い知る。


心肺蘇生って、心臓マッサージをして人工呼吸をするやつだったよね。

意識が飛ぶ直前、唇に何か温かいものが触れていたような気がしたから、もしかして……。



「……ちょっと、どこ触ってるの」



ハッと我に返り、口元に当てていた手を急いで離した。



「もう、こっちは必死で救助してたっていうのに」

「ううっ、すみませんっ」



ジリジリと凪くんとの距離が縮まる。近づいてくるジト目から逃れようと、帽子でガードするも……。



「そんな純情乙女みたいな反応されるとは思わなかったよ」