砂浜に描いたうたかたの夢

「何回も注意したんだけど、なかなか減らなくてね。結局健康診断で引っかかるまで治らなかったわ」

「そんなに濃い味が好きだったんだね」

「ええ。お医者さんからも厳しく言われて、それからは健康的な食事をするようになったの」



ここ1週間の、祖父の食事中の様子を思い出す。


確かに、あまり揚げ物とかは食べず、私や智に譲ってくれてたな。台所にも、おばあちゃんを呼ぶ時以外はほとんど入ってなかった気がする。

つまり、本当はみんなに振る舞いたいけど、被害者を出してしまうから、我慢するためにあえて台所に近寄らないようにしていたのか。

家族のために作っても、自分しか楽しめなかったのはちょっと気の毒だな。



「大変だったんだね。でも、料理ならお父さんが得意だから、作り置きはしなくて大丈夫だよ!」

「「ええっ⁉」」



口にした途端、驚愕に満ちた声で返された。



「お父さんって、一昨日ベロンベロンに酔っぱらってたクニユキよね?」

「はい」

「グラスを割って、一花ちゃんお手製の料理までひっくり返した、暴れん坊のクニユキよね?」

「は、はい」

「次の日二日酔いでお盆初日から寝坊して、先祖に情けない姿を晒した、あのクニユキよね?」

「はい、そうですけど……」