「将来の夢か……」



欠け始めた月の下、静寂に包まれた海岸に腰を下ろし、砂浜を指でなぞる。


水泳選手、インストラクター、ダイバー、ライフセーバー、イラストレーター。

幼い頃から沢山あったけど、今はもう全てうたかたの夢になってしまった。


……というより、そもそも俺に夢を抱く資格なんてない。



『……スランプに、なって』



夢を書き出しながら今日の出来事を振り返る。


先月スケッチをしていたお気に入りの場所で、俺はSNSを放置している理由の1つを打ち明けた。

のだが……案の定、一花を傷つけてしまった。



『私の絵見てる時、辛くなかった?』



悩みを抱えているとは知らず、無神経にお披露目しちゃったって、心を痛めたんだろうな。

そもそも、見たいと言い出したのは俺なんだから、一花は何も悪くないのに。


素直で、純粋で、真っ直ぐで。
そして、とても眩しくて──正直、直視するのが辛かった。


最後の夢を書いて、空を見上げる。月に薄雲がかかり、ほんの少し辺りが暗くなった。