砂浜に描いたうたかたの夢

「……スランプに、なって」



SNSの更新が止まっていたのは勉強が忙しいから。DMの返事ができなかったのはスマホが使えなくなったから。

しかし──真の理由、根本的な原因は別の場所にあった。


『乗り越えるためにあえて離れていた』という選択を、どうして考えられなかったのだろう。

趣味で描いている私でさえも、上手く表現できなくて悩んだ時期があったというのに。



「そんな悲しい顔しないで。まだ本調子じゃないけど、最近回復してきてるんだよ」

「そう……? 私の絵見てる時、辛くなかった?」

「全然。むしろ間近で見れたからテンション上がってたよ。ありがとう」



感謝されてしまった。

描けない自分に嫌気がさしていたんじゃないかなって不安だったけど……気分転換できていたのかな。


すると、ふわっと風が吹いて、潮の香りが私達の間を駆け抜けた。



「……いい景色。見れて良かった。教えてくれてありがとね!」

「どういたしまして。俺も、一花ちゃんと一緒に見れて良かった」