砂浜に描いたうたかたの夢

これはちょっと黒くなってるな。こっちは色が薄いからまだ熟してなさそう。

数分間吟味し、全体的に色が濃い物を選んだ。



「見つかって良かったね。他にも何か買うの?」

「うん。あとはね……」



奥に進みながら隣を見ると……凪くんの視線が、私ではなく桃に向いていた。



「凪、くん?」

「あ、ごめん。桃見てたら、犬に食べられたの思い出しちゃってさ」



予想の遥か上をいく返答に、思わず足が止まった。



「犬に……⁉」

「うん。他にも、バナナとメロンと、昨日はスイカも食べられちゃったんだよ」



ええええ⁉ 何そのワンちゃん! 食い意地張りすぎじゃない⁉
ジョニーも食いしん坊なほうではあるけど、人の物を盗るほどがめつくはないよ⁉



「災難だったね……。しつけはされてるの?」

「多分。ひいじいちゃんとばあちゃんの言うことは聞いてるから……。でも、時々くっついてくる時もあるんだよ」



笑顔を見せた凪くんだけど、瞳は切なさの色が抜けていない。