砂浜に描いたうたかたの夢

スクロールする指を止めて、彼が指差した写真をタップした。

投稿日時は1年前の夏。写っているのは、美味しそうなフルーツサンドとコーヒー。

一見、なんの変哲もない写真に見えるけれど……。



「実はこのフルーツサンド、ご当地限定のメニューでさ」

「ご当地⁉ でも、お店なら沢山あるんじゃ……」

「あるよ。だけど、その中でも販売店舗が限られてたんだよ。それだけでもかなり範囲は絞られるのに……俺、リアルタイムで投稿して……」



全身の皮膚がゾクッと粟立った。


写真の下には【おやつなう】の文字。

つまり、『今私、ここにいます』と全世界に発信しているようなもの。顔出ししてなくても、声をかけられる恐れは充分ある。

怖くなり、急いで画面をトップページに戻した。



「位置情報は付いてなかったんだよね?」

「うん。だからケーキの情報だけで特定したんだと思う。声かけられた時はマジでビビった。心臓破裂するんじゃないかってくらいバクバクして。なんとか平然を装ったからバレずに済んだけど、もし……」

「やめて、それ以上はやめて」