砂浜に描いたうたかたの夢

味わっていると、凪くんが頬杖をついてクスクス笑い始めた。



「な、何?」

「幸せそうに食べるなぁって」



フォークをケーキに刺す手が止まり、カーッと顔の熱が急上昇する。

私の馬鹿……! 空腹だからってがっつきすぎだよ! しかも推しの前で! 恥ずかしい……。



「まじまじと見ないでよ……」

「ごめんごめん。じゃあこれならいい?」

「いや、逆に食べづらいよ」



その場で目を閉じた彼にツッコミを入れた。


今日の今日まで、真面目で真っ直ぐな人かと思ってたけど、意外にもお茶目で可愛げのある人だったんだな。

なんて言ったら、またムキになって怒ってきそうだから、胸の中に秘めておくけど。



「……あっ、写真撮ってなかった」



半分食べたところで、絵日記用の写真を撮るのを忘れていたことに気づいた。

ふぅ危ない。食欲に気を取られててすっかり忘れてた。


ポケットからスマホを取り出し、お皿とフォーク、マグカップの位置を調整して1枚撮影。

お店のライトがいい感じに当たって、食べかけだけどオシャレな雰囲気が出てる。秋服の次はこれを描こうかな。