砂浜に描いたうたかたの夢

枕を見つめていた時と同じ、真剣な眼差し。


『もうやだ……っ、帰りたい』


心の健康と聞いて、以前自分が苦しまぎれに吐いた弱音が脳内をよぎった。

さっきの人生の話も腑に落ちたし、今だって、心に響くどころか、核心を何度も突かれて動揺している。



「あっ、ごめん。つい熱く……」

「ううん。……もしかして、過去に何かあった?」



恐る恐る尋ねると、目を伏せて静かに頷いた。



「俺も、周りの声に囚われてた時期があって。今の一花ちゃんが、その時の自分と似てたから……」



そう……だよね。
SNSでは、投稿する度に称賛される、輝かしいインフルエンサー。

だけど……中身は私と同じ、10代の高校生だもんね。



「マジごめん。せっかく遊びに来たのに、空気重くなっちゃった」

「ううん! 励ましてくれてありがとう」



眉尻を下げている彼にお礼を言った。


女の子の扱いに長けている反面、ちょっぴり不器用なところがあったり。

絵のモデルをすんなり引き受けてくれたと思いきや、苦悩を抱えていたり。


彼の人間らしい部分に触れて、ほんの少しかもしれないけど、心の距離が縮まった気がした。