砂浜に描いたうたかたの夢

だとしても、絵だけは、同じものは絶対描きたくない。実際、SNSの投稿も、似たような写真は載せないよう心がけている。

これは絵を愛する私の小さなこだわりだ。



「なら、この家は? 広いからネタはありふれてるし。あとは自然のこととか、近所のこととか」

「…………」



お父さん、それももう描いてるから。だからこうやって聞いてるんだよ。


トイレが男女別にあって、女子トイレは洋式の便器を置いただけのボットン便所だとか。

洗濯機が二槽式で、お風呂に追い焚き機能がついてないとか。

食べ物系だったら、ご飯がお粥みたいに柔らかかったり、味噌汁が薄味だったり。

他には、六等星くらいの小さな星が見える、若者が少なくて散歩中に珍しがられるなど……。


ちょい都会育ちの自分には、見るもの触れるもの全てが新鮮で。大体のことは最初の3日間で全部描いてしまった。


分かりやすく黙り込んでいると、父の口から、はぁ……と溜め息が漏れた。


ここまでのやり取りで、なんとなく気づいた人もいるだろう。

夏休み前、かわちゃんに腹を立てたもう1つの理由は……。