「どうしよう、怖い」
 コンドルが泣きそうな顔をしている。

「いい提案があるわ!ここでこっそり、入れ替わるっていうのはどう?コンドルの代わりにわたしが…」
「待ていっ!」
 コンドルの震えが止まった。

「ありがとな、赤毛。嘘でもそうやって俺を助けようとしてくれるおまえは、最高の友達だ」
 コンドルがくしゃっと笑った。

 いや、わたし本気だったんだけれども。

 屋上から下へ、準備OKの合図を送ると、魔術科の生徒たちが一斉に風魔法でほどよい塩梅の上昇気流を発生させてくれた。

 下で見守っているレイナード様にも手を振る。

「押すなよ。自分のタイミングで行くから、ぜえぇぇぇったいに押すなよ?」
 コンドルが屋上の縁に立った。

「…それ、押せってこと?」

「違うにきまっ…!うわぁぁっ!」
 わたしを振り返ったコンドルが足を滑らせ、妙な体勢で宙に飛び出し落下していく。

「コンドル!大丈夫よ!あなたはコンドルなんだから落ち着いてっ!!」

 声の限りに叫ぶと、どうにか体勢を立て直したコンドルが上昇気流に乗ってふわりと浮いた。

 そのまま大きな螺旋を描いて気流に乗り、屋上よりも空高く舞い上がったコンドル1号に、「わあっ!」という歓声が上がる。

 コンドルが笑っている。
 すごいわ!やっぱりあなたはコンドルなんだわ!

 コンドル1号はゆっくりと旋回しながら高度を落とし、運動場へ着地した。
 生徒たちが駆け寄り、労いと祝福の言葉をコンドルに投げかけているのが見えた。

 この日、コンドルことフレッド・ハウザーは、正真正銘のコンドルになったのだった。