悔しい。
何もできない弱い自分が嫌で祓い屋になったのに、これじゃあ昔と何も変わらないじゃないですか!
奥歯を噛み締めながら、手にしたままになっていたスマホを、ギュッと握る。
……そう言えばスマホ、サトルくんを呼び出すのに使ってから、ずっと握りっぱなしでしたっけ。
ん、あれ?
「とにかく俺が戦うから、トモは皆を守って……トモ、聞いてる? トモ!」
葉月君が何か言っていますけど、頭に入ってきません。
それよりも今しがた浮かんだある策が、頭の中を駆け巡っています。
もしかしたら、この方法を使えば……。
「葉月君!」
「うわっ!? なにいきなり!?」
「葉月君は引っ込んでてください! サトルくんの相手は、私がします」
「いや、けどトモの力じゃアイツには……」
勝てないと言いたいのですよね。悔しいけど、確かにその通りです。
だけど。
「いいから、ここは任せてください。昔、悟里さんが言っていましたよね。術を使うだけが戦いじゃない、頭を使って考えろって。絶対に上手くやりますから、今だけは私のことを信じてください」
「トモ……」
振り返ってはいけないから葉月君の方を見ることはできませんけど、彼は今どんな顔をしているでしょうか?
葉月君は少し黙っていましたけど、やがて決心したように答えます。
「……分かった。思いきりやっちゃって!」
「信じてくれるのですか?」
「当たり前でしょ。好きな子がやるって言ってるのに、信じてあげられなくてどうするのさ」
「好き———⁉ な、ななな、何を言っているのですか⁉」
こんな時に変な冗談を言わないでください!
思わぬ彼の言葉に、椎名さんは「ほー」ッと声を漏らして、明美ちゃんは「キャー」って黄色い歓声を上げます。
なんだか張りつめていた空気をぶち壊しにされた気がしますけど。
ま、まあいいでしょう。
それよりも、作戦開始です。
私は振り返らずに、そっとスマホを操作する。たしか、ここをこうして……。
「はははっ、面白い余興だったよ。で、結局そっちのお姉さんが、僕と戦うの?」
サトルくんが無邪気な声で言ってきます。けど私は返事をせずに、スマホを操作し続ける。
ここをタップして、角度を変えて……よし、今です!
——カシャ!
静かな神社に、機械音が響く。
そして私は、背後にいるサトルくんに言い放つ。
「……見つけましたよ、サトルくん」
「え?」
「見つけたのです、真由子ちゃんを。振り返らずに見つけました!」
手にしていたスマホを、高々と掲げる。
「サトルくん、油断しましたね。振り返ってはいけないというのが、アナタのルール。だけど『振り返ってはいけない』というのは、『後ろを見てはいけない』ではありません!」
ですから私は振り返らずに。
前に松木さんから教わったスマホの自撮機能を使って鏡で映すように、背後にいる真由子ちゃんの姿を撮影したのです!
スマホの画面には私達の背後。社の前に立つ真由子ちゃんの姿が、バッチリ映っています。
どうです! 振り返らずに、見つけましたよ!
何もできない弱い自分が嫌で祓い屋になったのに、これじゃあ昔と何も変わらないじゃないですか!
奥歯を噛み締めながら、手にしたままになっていたスマホを、ギュッと握る。
……そう言えばスマホ、サトルくんを呼び出すのに使ってから、ずっと握りっぱなしでしたっけ。
ん、あれ?
「とにかく俺が戦うから、トモは皆を守って……トモ、聞いてる? トモ!」
葉月君が何か言っていますけど、頭に入ってきません。
それよりも今しがた浮かんだある策が、頭の中を駆け巡っています。
もしかしたら、この方法を使えば……。
「葉月君!」
「うわっ!? なにいきなり!?」
「葉月君は引っ込んでてください! サトルくんの相手は、私がします」
「いや、けどトモの力じゃアイツには……」
勝てないと言いたいのですよね。悔しいけど、確かにその通りです。
だけど。
「いいから、ここは任せてください。昔、悟里さんが言っていましたよね。術を使うだけが戦いじゃない、頭を使って考えろって。絶対に上手くやりますから、今だけは私のことを信じてください」
「トモ……」
振り返ってはいけないから葉月君の方を見ることはできませんけど、彼は今どんな顔をしているでしょうか?
葉月君は少し黙っていましたけど、やがて決心したように答えます。
「……分かった。思いきりやっちゃって!」
「信じてくれるのですか?」
「当たり前でしょ。好きな子がやるって言ってるのに、信じてあげられなくてどうするのさ」
「好き———⁉ な、ななな、何を言っているのですか⁉」
こんな時に変な冗談を言わないでください!
思わぬ彼の言葉に、椎名さんは「ほー」ッと声を漏らして、明美ちゃんは「キャー」って黄色い歓声を上げます。
なんだか張りつめていた空気をぶち壊しにされた気がしますけど。
ま、まあいいでしょう。
それよりも、作戦開始です。
私は振り返らずに、そっとスマホを操作する。たしか、ここをこうして……。
「はははっ、面白い余興だったよ。で、結局そっちのお姉さんが、僕と戦うの?」
サトルくんが無邪気な声で言ってきます。けど私は返事をせずに、スマホを操作し続ける。
ここをタップして、角度を変えて……よし、今です!
——カシャ!
静かな神社に、機械音が響く。
そして私は、背後にいるサトルくんに言い放つ。
「……見つけましたよ、サトルくん」
「え?」
「見つけたのです、真由子ちゃんを。振り返らずに見つけました!」
手にしていたスマホを、高々と掲げる。
「サトルくん、油断しましたね。振り返ってはいけないというのが、アナタのルール。だけど『振り返ってはいけない』というのは、『後ろを見てはいけない』ではありません!」
ですから私は振り返らずに。
前に松木さんから教わったスマホの自撮機能を使って鏡で映すように、背後にいる真由子ちゃんの姿を撮影したのです!
スマホの画面には私達の背後。社の前に立つ真由子ちゃんの姿が、バッチリ映っています。
どうです! 振り返らずに、見つけましたよ!