その後、前園さんに詳しい話を聞きましたけど、あの人体模型は元々小学校にあったもので。
夜な夜な動いて騒ぎになっていたので、徐霊してほしいと送られて来たのだそうです。

「なるほど。人形や人物画といった人の形をした物には、魂が宿りやすいからねえ」
「しかも学校は、たくさんの感情が渦巻く場所。外部からの影響を受けたのでしょうね」

多くの人が集まる学校では、悪意や恐怖、喜びや嬉しさと言った感情がひっきりなしに生まれては消えていきます。

それら感情が人体模型に力を与えたり、妖を生み出したりするのはよくあること。
だから学校の怪談なんてものは、いつの時代にも存在するのです。

人体模型は前園さんに回収されて、彼女は私と悟里さんにペコリとお辞儀をします。

「ありがとう、助かったわ。あ、そうそう、祓ったばかりで悪いんだけど、水原さんには次の仕事の話があるの」
「私ですか? それは構いませんけど、今度はどこですか?」

この前は廃校でしたけど、次は廃病院とか?

「実は水原さんの通っている市房高校に出る、霊を祓ってほしいのよ。ある生徒の親御さんから、相談があってね」
「私の学校にですか? ですが毎日通っていますが、変な気配なんて感じませんけど」
「いや、読めたよ。大方条件が揃わないと、起きないタイプの何かがあるんだね。でなきゃ知世ちゃんが、気づかないはずないもの」

悟里さんが髪をかきわけながらニヤリと笑うと、前園さんが「正解」と同意する。

なるほど、それじゃあ気づかないわけです。母校で起こる事件となると、私が適任ですね。

「わかりました。その仕事引き受けます」

まさか学校でも仕事をすることになるなんて思いませんでしたけど、こっちはプロの祓い屋です。
依頼とあれば、はたしてみせましょう。