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トモがトイレへと消えて。席に残った俺に、師匠は諭すように言ってくる。

「風音、言っとくけど犯人を捕まえてどうこうしようなんて、考えちゃダメだからね」
「どうして! トモを傷つけた奴を、放っておけって言うの⁉」
「気持ちはわかる。けどそれをしたら、知世ちゃんへの風当たりがますます強くなるかもしれない。それでも良いの?」
「それは……」

言葉に詰まる。

確かに師匠の言いたいことは分かるけど。
ああ、もう、面倒くせーっ!
本当なら一発殴ってやりたいのに、相手は女子だしなー。
やりにくいったらありゃしない。

「どうやら知世ちゃんには呪いそのものよりも、呪われたって事実の方が堪えたみたいだね。あの子、あたしに似て繊細だから」
「師匠が繊細かどうかは置いといて、そうなんだろうね。けど納得いかない。だいたい、俺達祓い屋でしょ。呪いをかけたやつを、そのままにしておいていいのかよ?」
「祓い屋と言っても、全てに対処できるわけじゃないからね。特に今回の呪いは、他にもやってる人がたくさんいる。なのに依頼されたわけでもないのに、知世ちゃんだけ特別扱いして助けるのは、プロのやり方じゃないよ」

それを言われると何も言い返せない。
祓い屋が万能でないことくらい、俺だって分かってるからね。

「けどね。祓い屋としてはどうすることもできなくても、友達としてなら何かできるんじゃないかな。生憎あたしは、知世ちゃんの友達になるにはちょっとばかし歳が離れてるけど、風音なら。犯人をとっちめるのとは、別のやり方でね」
「俺が? 確かに師匠は友達って言うには、うーんと歳上だけど」
「ちょっとばかしだ! とにかく、知世ちゃんが、泣かなくてすむ方法を、よく考えるんだ。大丈夫、風音にならきっと出来る。頼りにしてるよ、王子様」

師匠は俺の目をじっと見ながら、諭すように言う。
ああ、もちろんそうするさ。

トモは放っておいてなんて言ってたけど、あんな泣きそうな顔を見せられたんだ。
俺のやり方で、しっかりケリ付けてやるからな!