本当は彼女達の嫉妬にまみれた視線、形だけの仲良しごっこに、気づいていないわけではありませんでした。

カラオケで歌っている最中も、時折冷たい目で見られている気がしていました。
そんな風に考えちゃダメ、根拠も無いのに疑うなんてよくないって、気づかないフリをしていたけど。

どうやら私が思っていた以上に、嫌われていたみたいです。

「葉月君、明日から登校時間をズラしませんか? 一緒にいたら、また今回みたいな事が起こるかもしれませんし」
「待ってよ。悪いのはあいつらなのに、なんで俺達がこそこそしなくちゃいけないのさ!」

ええ、分かってます。
葉月君の言っていることは正しくて、私達は何も悪くありませんもの。

だけど、さっきの悪意に満ちた彼女達を思い出すと怖いんです。
悪霊や妖よりも、ずっと。

「お願いです、もう放っておいてください。それとできれば、学校でも話しかけないで。葉月君が悪いわけでも、嫌いなわけでもないですけど、きっとそうした方がいいんです」
「トモ……」
「もちろん祓い屋の仕事は、今まで通りやりますから、何の問題もありません。ただ放っておいてくれれば、それで。……すみません、少しお手洗いに行ってきますね」
「待てって。まだ話は終わって……」

引き留めようとする葉月君。ですがそんな彼を、悟里さんがはばむ。

「止めとけ。知世ちゃん、ゆっくりしてきて良いからね」
「はい……すみません」

ペコリと会釈をして、トイレに駆け込む。
だけど個室のドアを閉めて一人になると、さっきの映像がフラッシュバックしてきました。

とても……とても気持ち悪い。
葉月君と一緒にいただけで、どうしてそんなに嫌われなくちゃいけないんですか⁉

理不尽で腹立たしくて。だけど怖いから、何もできない。

自分が情けないです。
強くなったつもりでいましたけど、結局私は昔と変わらず、弱くて臆病なまま。

刺すような痛みを胸に受けながら、私は溢れ出る涙をぬぐいました。