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ホームレスの霊を祓った後、やって来たのは町中にあるカフェ。
席には私と葉月君の他に、悟里さんの姿もあります。

呪いの事を連絡したらすぐに飛んできてくれたのですが、その表情は険しく、眉間にシワを寄せています。

「電話で言ってた呪いのことだけどね。ダーリンに調べてもらったら、少し前にSNSで流行った方法らしい。効果は弱いけど、お手軽にできるからイタズラのつもりでやる人が、まあまあいたみたい」

ダーリンと言うのは、悟里さんの旦那さん。
実は悟里さん、結婚しているのです。

そしてその旦那さんは、私達と違って見える人ではないのですけど、オカルト雑誌のライターをやっていて、情報面で様々なサポートをしてくれる方。
今回も急な連絡だったにも関わらず、すぐに調べてくれたみたいです。

けど、気になるのは呪い。
効果が弱いとはいえそんな簡単に、遊び感覚で誰かを呪うなんて。

呪いそのものよりも、そんなことをする人がいるということにゾッとします。

「今回標的にされたのは知世ちゃんだったわけだけど。最近、悪いこととか起きてない?」
「そういえばさっき、除霊中に飛んできた紙が顔に張り付いてきたり、空き缶に足をすくわれて転んだりしたのですが。おそらく呪いのせいだったのだと思います」

それは呪いと呼ぶには、あまりにも小さな災難。
どうやらお手軽にできる分効果が弱いというのは、本当だったみたいです。

「けど、笑っちゃいますね。こっちはプロの祓い屋ですもの。そんな小さな呪いなんて、通じるわけないのに」

ニコッと笑ってみせてから、カフェオレをゴクリ。
でも本当は、味なんて分かりません。

悟里さんはそんな私を心配そうに見つめて、葉月君は低い声で言います。

「犯人はハッキリしてる。なぜ呪いなんてかけたのか、すぐに問いただして……」
「止めてください!」

大きな声を上げて、店内にいるお客さんが何事かとこっちを見ますが、そんなこと気にしている場合ではありません。

「余計な事はしないでください。もう呪いは消えたのですから、それでいいじゃないですか」

葉月君の言う通り。犯人が誰かは、何となく分かっています。

前にカラオケに行った時、自撮りのやり方を教えてくれて、こうした方が写りがよくなると髪をいじってきた松木さん。
おそらく彼女が、あの時一緒にいたメンバーと組んで、呪いをかけたのです。

怨みを買った原因は、おそらく葉月君。
きっと私が彼と一緒にいるのが、気にくわなかったのでしょう。