◇◆◇◆

葉月君が転校してきてから一週間。転校生が注目を浴びる期間は終わって、クラスは今まで通りの雰囲気に戻っている……なんてことはありません。

「ねえねえ、葉月君は休みの日、何してるの?」
「今日放課後みんなで遊びに行くんだけど、葉月くんも行かない?」
「好きな女の子のタイプ教えてー!」

今日もまた、葉月君の机の周りには、女子がむらがっています。一週間経っても、未だにこんな感じなのですよ。

「休みの日は、どこかに出掛けることが多いかな。放課後はゴメン、今日は用事があるんだ。だけど、誘ってくれてありがとう。また今度、一緒に遊びに行きたいな。好きな女の子のタイプは……ふふっ、秘密だよ」

口元に人差し指を立ててイタズラっぽく笑うと、キャーっと歓声が上がります。

ふん、なに格好付けてるんですか。きっと女の子にチヤホヤされて、さぞ気を良くしているんでしょうね。

今の葉月君を見てると、何故かムカムカするから不思議。
けどそんな私の周りも、彼が来てから変化が起こっているのですよね。

「ねえ、水原さんって、葉月君のことよく知ってるんだよね。幼なじみってやつ?」
「今朝一緒に登校してたよね。ひょっとして付き合ってるの⁉」

つ、つつつ、付き合ってなんかいませんってば!

……まあこんな風に、声をかけられることが多くなりました。
少し前までは一人でいるのが当たり前だったのに、私の机の周りには数人の女子が集まっています。

ちなみに一緒に登校したのは朝家を出た時、たまたま鉢合わせしたから。
アパートの隣に住んでいるのだから、そういうこともあります。

けどどうやら彼と私みたいな地味っ子が一緒にいるのはおかしいみたいで、登校中は多くの視線に悩まされました。
けど、もっと私を悩ませているのが。

「あたし、前から水原さんとお話ししてみたかったの。今日は一緒にお昼食べよう」
「は、はい……」

突然のお誘いに何とか返事をしながら、心の中で思う。
『前から』というのは、葉月くんが来てからですよね?

葉月君が来てから、私のクラスでのポジションは、彼のオマケになっているのです。