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お祓いを終え、帰路についた私達は、途中であったコンビニで一休み。

葉月君は買い物があると言って中に入って行きましたけど、私は外で今回の結果を、悟里さんに電話で報告しています。

「というわけで、首無しライダーは無事に成仏させることができました。あの、それと一つ聞きたいのですけど、葉月君って向こうにいた頃は、どんな感じだったんですか?」
『おやおや。知世ちゃんの方から聞いてくるなんて珍しいねえ。あたしがいくら様子を伝えようとしても、『葉月君のことなんて知りません』って、ツンデレ全開だったって言うのに。久しぶりに会って、気になっちゃった?』

スマホごしに、クスクスと笑う声が聞こえてきて、私は思わず顔を赤らめる。
な、ななな、何を言っているのですか!?

「か、からかわないでください。まあ、気になることはありましたけど」
『そうだねえ。向こうからの報告だと、まじめに仕事をしていたみたいで評判が良かったよ。私も師匠として鼻が高かったなあ。ただ少し、熱を入れすぎちゃったみたいだけどね』

それって、どういうことですか? 

『風音はね、毎日寝る間を惜しんで、祓い屋業に清を出していたんだ。学校のある日も無い日も、とにかく仕事をいれてたみたい。だけど去年の今ごろ、強力な悪霊と戦ってね。ケガをして、入院してたんだよ』
「入院⁉ それで、大丈夫だったんですか?」
『怪我自体は大したこと無くて、ほとんど検査だけだったんだけどね。けどさすがにやりすぎってことになって、半月ほど強制休業。丁度テスト前だって事もあって、療養と勉強に集中させようって事になったみたい』
「そんな……」

悟里さんの話を聞いて、言葉を失う。
遊んでばかりいたから成績が下がって、勉強のために仕事を休んでたって言ってたのに。

そうとは知らずに、ろくに話も聞かずに怒ってしまっていました。

「わ、私、葉月君に謝ります。何も知らずに、失礼な態度をとってしまって」
『ははは、そんな深刻に考えなくてもいいよ。実はね、この事は知世ちゃんには言わないでくれって、葉月君に口止めされていたんだ。それでも知っておいた方が良いって思ったからこうして話してるんだけど、知らないふりをしておいてくれないかな』
「わざとナイショにしていたんですか? でも、どうしてそんな事を?」
『それは男心ってやつだね。怪我して入院なんて、カッコ悪いって思ったんじゃないの? 好きな女の子の前で、格好付けたがらない男の子なんていないからねえ』
「どういうことですか?」

首をかしげると、電話の向こうからは『くくく』とおかしそうなに笑う声が聞こえてきます。

『こりゃあ風音も苦労するわ。とりあえず、今日はお疲れ様。気をつけて帰るんだよ』

おかしそうな笑い声とともに、通話は切れてしまいました。
結局悟里さんは、何を言いたかったのでしょう?