首無しライダーはエンジン音を響かせながら、こっちに迫ってきます。

「このままここで迎え撃とう。トモ、いける?」
「やってみます」

歩道から車道へと出て、首無しライダーの進路に立つ。
そして近づいてくるバイクに目掛けて、右手をかざしました。

「迷う者、荒ぶる魂、鎮まりたまえ――滅!」

放たれた光が、首無しライダーめがけて飛んでいきます。しかし。

「避けられた⁉」

当たる直前、相手のバイクがギュンと横にそれました。
続けて第二波を放ってみるも、結果は同じ。相手がすばしっこくて、当たりません。

そうしている間にも、バイクはこっちに迫ってくる。
まるで私達を、ひき殺そうとするかのような勢いで……。

「トモ、避けて!」
「きゃっ!?」

葉月君が私を抱き締めながら、横に跳ぶ。
そしてさっきまで私達がいた所を、首無しライダーが操るバイクが孟スピードで駆けていきます。

あ、危なかった。
この動き、どうやら完全に私達を跳ねようとしていたみたいです。

すると通りすぎたバイクはスピードを緩め、ゆっくりとこっちに振り返ってきました。
まるで私達を、狙っているかのように。

「戦う気満々じゃないか。首無しライダーって走ってるだけで、人は襲わないって話じゃなかったっけ?」
「私達が、攻撃を仕掛けましたから、敵と認識されたのかもしれませんね」

まあ向こうにしてみればただ走っていたところをいきなり攻撃されたのですから、怒るの無理無いです。

けど私達は祓い屋。
成仏せずにさ迷う霊を祓うのが仕事なのです。

「ちょっと申し訳ない気もしますけど、祓わせてもらいましょう。問題は、あのスピードですけど」

起き上がって、首無しライダーを見据える。
さっきは二回とも避けられてしまいましたから、今度はもっとよく狙わないと。

けどそんな私の肩を、同じく身を起こした葉月君が叩きます。

「トモ、ここは俺に任せて。アイツの動きを止めてみせるから」
「葉月君……。何か手があるのですか?」
「まあね。トモは下がって、待機していてよ」

まあ、そう言うなら。

私は後ろに下がり、葉月君は道路の真ん中に立つと、再び迫る首無しライダーと対峙します。

あのスピード。もしもはねられたら無事ではありません。
けど葉月君は微動だにせず、それどころか腕すら構えずに、黙って突っ立っています。

「何をやっているのですか。早く構えて!」

だけど葉月君はまるで私の声なんて聞こえていないみたいに、動かないまま。
そうしている間にも、首無しライダーは速度を上げて、彼に迫ります。