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修行で失敗して、心がズタズタになった次の日。
わたしは重い足を引きずりながら、通学路を歩いていた。

子供の数が少ない祓い屋の里だけど、ちゃんと学校はある。全学年合わせても10人もいない、小さな学校だけどね。
けど今日は、学校に行きたくなかった。だって行ったら、風音君と会うもの。

風音くん、泣いて逃げ出したわたしを、どう思っているかなあ。

昨日あれから家に帰って。夜になって帰宅した悟里さんは、何かあったことに気づいたみたいだったけど何も言わずに。
そのまま朝を迎えてしまった。

田んぼのわきを通りながら学校に向かっていたけど、途中でつい足を止めちゃう。

やっぱり、行きたくないなあ。
だけどサボったら、悟里さんに怒られるかなあ……。

「おーい、トモー!」
「———っ⁉」

悩んでいると、道の先から駆けてくる風音君の姿が。
どうしてこっちに来るの⁉ 今一番会いたくないのに!

と、とにかく逃げなきゃ。
だけど背を向けて走り出したものの、わたしの鈍足じゃ逃げ切れなくて、すぐに襟首をつかまれた。

「待ってって! 昨日は泣かせちゃってゴメン。お願いだから、俺の話を聞いて」
「話すことなんてないよ。わたしのことはもう放っておいて!」
「そんなことできるわけないだろ、妹弟子なんだから!」

有無を言わせずに引き留めてくる風音君。
そして何を思ったのか背負っていたランドセルから、昨日遊んでいたゲーム機を取り出してくる。

「どうして学校に行くのに、そんな物持ってきてるの?」
「細かいことは気にしないで。うちは校則ゆるいから、遊ばなければ持っていくのは自由なんだ。それよりこれを見る!」

ゲームで遊ぶ気分じゃないんだけど、強く言われてしぶしぶ画面を覗きこむ。
映っていたのはポケットなモンスターを戦わせたりボールで捕まえたりする、人気のRPGだった。

「俺たちが使う『滅』と『浄』だけどさ、あれは相手を攻撃して弱らせたところで浄化するだろ。このゲームで言えば、こんな感じになるわけ」

風音くんが操作するモンスターが相手モンスターに攻撃して、体力ゲージを大きく減らす。

九割くらい減って止まったと思ったら、今度はボール状のアイテムを使って、敵モンスターを捕獲した。

どうやら攻撃がわたしたちで言うところの『滅』。捕獲が『浄』だって言いたいみたい。