「つれないなあ。向こうで休業中だった祓い屋が復帰することになって、人手不足が解消されたんだよ。だから俺はお役ごめん。こっちに戻って来たってわけ」
「それならそうと、教えてくれればよかったのに。だいたい今日は、悟里さんが来るって聞いていましたよ」
「ああ、それね。ごめん、実は初めから俺が行く予定だったんだけど、頼んで内緒にしてもらってたんだ。いきなり現れて、サプライズしようかって思ってね。逆にこっちが驚かされるとは思わなかったけど」

急に心配そうな目をする葉月くん。

う、その通りです。
会いに来たらいきなり、首を絞められていたのですから。

情けない。久しぶりに会ったっていうのに、あんなみっともない姿を見せてしまって。
だけど項垂れる私の頭を、葉月くんはポンポンと撫でます。

「今回のことは反省しなくちゃだね。霊だけでなく、人間にも警戒しないと。けど、トモならもう失敗しないでしょ」
「当たり前です。それと、助けてくれてありがとうございました」

来てくれなかったらどうなっていたことか。
助けてもらったことは、素直に感謝してます。

まあこんな風に、まるで子供を慰めるみたいに頭を撫でるのは、どうかと思いますけど。

今回は失敗しましたけど、彼の前では二度とこんな醜態はさらしません。
だって葉月君は、私の越えるべき目標なのですから。

「そういえばさっきから気になってたんだけど。トモ、ひょっとして背縮んだ?」
「なっ⁉ 縮んでません! 葉月君がタケノコみたいに、ニョキニョキ伸びてるんです!」

密かに気にしていることをー!
対して葉月くんの方は、会わない間にずいぶん大きくなったみたいで。
前は背はほとんど差がなかったのに、ズルいです。

「俺もそんな高い方じゃないんだけどなあ。もうちょい伸ばしたいから、牛乳飲む量増やそうかなあ」

自分の頭に手を当てながら悩まし気に言っていますけど。
ほほーう、それはもしかして、もっとチビな私に対する当てつけでしょうか?

「そうにらまないでよ。良いじゃん、背が低くても可愛いんだしさ」
「か、可愛くなんてありません! からかわないでください!」

だけど神経を逆撫でするように、頭を撫でてくる葉月君。

もう、相変わらず息をするように、人をからかうんですから。

助けてくれた事には感謝しています。
だけど、こういう所は大嫌いです!