反対に私は、日比人が近づく度に一歩ずつ退いていく。それから少しして、わ、わ、わ、と転びそうになると、すかさず日比人の腕が伸びた。
間に合わなかったのか、それともわざとか。
私たちが揃って落ちた先はベッドの上で。
私の目と鼻の先には彼の顔。
ぽた、と日比人の髪の毛先から水が零れる。できるなら、その水で私の頬の熱さを覚ましてほしいくらい。
「…ひ、ひび」
んーと…?なんでこうなったんだっけ。
バイトから帰ってきて、そしたらお母さんじゃなくて日比人がいて…でも私、すぐに二階に行ったし…
「ひび、ちょっと近い、かな?…う、もっと近くなってるよ…!回想が上手くできないな!?」
「回想…?花の頭ん中にも俺がいるってこと?嬉しい」
…変、変だ。
こんな微笑み方、見たことない。いつの間にか繋がった手に気づくと胸がきゅっと鳴る。



