よくまあ人様の、しかも男性の部屋でぐうすかと寝れたもんだって我ながら神経の図太さを絶賛したい。
朝起きると、片桐さん机に突っ伏して寝ていた。


「あ、可愛い女の子だ」


美少女キャラ、制服姿の可愛い女の子達を成人男性が背を丸めて描いていたんだなって思うとなんだが不思議。
今日はまたまたやる事いっぱいだ。 まずは大家さんに連絡して、大学行って、バイトも休むわけにいかない。
連絡を思い通りに出来るか不安だなって思いながら、昨日と同じように服を着替えて部屋に戻ると片付さんが「うーん」と背伸びをしていた。


「おはようございます。あの、ごめんなさい。疲れ取れてないですよね」
「あ、おはようございます。いえいえ、ついさっきまで描いてたんで。それより寝れた?」


眼鏡を外し目頭を押さえてる。


「寝ました!ぐっすりと!」
「…ふ、それは良かった」


……ドキッ
ふわっと笑みを浮かべたその顔が、いつも見ていた無表情と違ってドキドキした。
片桐さんよく見れば綺麗な顔立ちをしているし、横顔なんてスーッと鼻筋通っていて、睫毛も長くて顎もシュッとしてて、え、この人ものすごくイケメンだ。


「君、えっと、」
「間宮です!」
「うん、間宮さん。確か学生なんだよね? 授業の後はバイト…とか?」
「はい」
「だったら俺今日一日家に居るんで、家の事大家さんに連絡しておくよ。多分間宮さんを通さなきゃいけない事もあるだろうから、それ以外は俺が……どうかした?」


指を唇に当てて眉間に皺を寄せ、真剣な顔をして私の事を親身になって考えてくれる。
東京は他人に無関心な人ばかりなんて聞いていたけど、そんな人ばかりじゃない。片桐さんのように優しい人が居て良かった。


「ありがとうございます」
「え、泣いてる? え、ごめん、なんかした?」
「ううん。嬉しいんです。色々不安だったんで、こんな事になっちゃったし、片桐さんがお隣さんで良かったって」
「………困った時は助け合わないと」


困ったように笑う、その表情が少し幼く見えてほっこりした。私も誰かが困っていたら助けられるくらい余裕でいたい。


「それより大学大丈夫?」
「え?」
「時間」


腕時計を指差してる。サァと血の気が引いて、慌てて部屋を飛び出した。ヤバい遅刻する!!


「すみませんっ、あとはお願いします! あ、今日の帰りは21時頃になります!」


叫びながら走って行く私を、欠伸をしながら見送ってくれた片桐さん。
見送られる事も久しぶりで、こんな最悪な状況下でもほんのりと幸せを感じた朝だった。