言葉にならなかった。
今朝好きだって自覚して咄嗟に言ってしまった時は、絶対にこの想いは一方通行で叶うわけがないと思っていたのに。


「っ、うぁっ……」
「泣かないの。まあ、泣いてる顔も可愛いけど、やっぱり俺は間宮さんの笑ってる顔が一番好きかな」
「ふぇぇっ、わ、私も片桐さんのっ、そうやってふにゃってしてる笑顔好きですぅぅ」
「あはは、もー泣き虫だな。でもうん、大丈夫。どんなに泣いても俺が拭ってあげられるから。”だから君が笑ってる隣に俺が居ても良い権利をください”」

そんな事を言われたらもう涙は止まることを知らないかのように流れ続け、今言ってすぐに片桐さんは涙をニコニコしながら拭ってくれた。

好き、好き、大好きが溢れてくる。
どんどん、どんどん溢れて止まらない。


「同居は一旦解消だけど、いつでも行き来できるから」
「うん」
「夏になったら縁側で西瓜食べながら花火をしよう」
「うん」
「秋には七輪を出して秋刀魚焼いてもいいね」
「ふふ、多分近所の人に怒られそうです」
「だったらお裾分け分も焼かないと駄目か」
「そういう問題じゃないような。あ、冬になったら炬燵出すんで一緒に温もりましょうね」
「うん、ミカンは絶対」
「うん」
「……大丈夫。寂しくなんてならないよ。すぐ隣だから」
「うんっ」


ぎゅううううと抱き締められて、自然とお互い見つめ合えばどちらかともなく目を瞑り唇を寄せあった。
ちゅ、と軽く触れただけのキスが、ドクドクと血流を良くさせる。


「間宮さん、これからは希子ちゃんって呼んでいい?」
「うん、あのじゃあ私も良平さん」


まだ二人の恋は始まったばかり。