婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 だが、すぐに気を取り直して護衛騎士を睨んだ。気位の高さはさすがというべきか。
「……兄上の?」
 その言葉に、ようやくサルジュが反応する。
「ええ、そうです。わたくしはユリウス様の婚約者の、エミーラ・キーダリですわ」
 研究資料に夢中になっていたサルジュの視線が、ようやく自分に向けられた。エミーラはそのことに安堵したようだが、向けられたサルジュの視線の冷たさに驚き、助けを求めて周囲を見渡す。
 だが、普段からは想像もできないほど冷酷な顔をしたサルジュに気圧されたように、誰も彼女に近寄れずにいる。
「カイド。兄上を連れてきてくれ。誰が犯人なのか、はっきりさせよう」
 そう言われた護衛騎士は、サルジュの傍を離れるわけにはいかないと、一度は断っていた。