婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「……ないはずです」
 彼女もアメリアと同じく、そう思ってくれたようだ。
 溜息をつくと、彼女は風魔法を使ってアメリアの制服とバッグを乾かしてくれた。
「ありがとうございます」
「ごめんなさい。私の魔法では書類の再現まではできないの」
「いえ、充分です。本当にありがとうございます」
 悪意に晒されただけに、その優しさが胸にしみる。
 彼女はマリーエと名乗った。
 リースやサルジュと同じ二年生で、エドーリ伯爵家の令嬢のようだ。
 エドーリ伯爵家といえば、アメリアだって知っている。
 領地内に鉱山があり、貴重な鉱石が採掘できると有名だった。王都にも広大な屋敷を有していて、かなり裕福な資産家である。
 その伯爵家の令嬢が、こんなに親切にしてくれるとは思わなかった。
 ありがとうございましたと、もう一度頭を下げる。
 その様子を見ていたマリーエが、呆れたように言った。