婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 覚悟をして目を閉じるアメリアを庇って、サルジュが手を伸ばす。このときは気が付かなかったが、彼はアメリアのすぐ近くにいた。彼の目の前に大柄な男子生徒がいたので、令嬢達もサルジュが出てくるまで気が付かなかったようだ。
「……なるほど」
 再現魔法が消えてからたっぷりと間を取ったあと、ユリウスがそう呟いた。
 その冷たい声はたしかに恐ろしかったが、アメリアも他の令嬢達も、本当にぞくりとしたのは、いつもは絶やさない穏やかな笑みを消したサルジュの方だった。
 美貌の正妃に一番よく似ていると言われているサルジュは、四兄弟の中でも際立って優れた容姿をしている。その整った顔立ちは人形めいていて、穏やかな顔をしていても気圧されるほどだ。
 そんな彼が表情を消すと、その美貌ゆえに凄みが増して、背筋が寒くなる。
 直接敵意を向けられていないアメリアでさえそうなのだから、他の令嬢達など怯えて声も出ないようだ。