婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

「申し遅れました。わたくしはレニア伯爵グロンドの娘、アメリアと申します」
「俺はユリウス。アメリアと呼んでもいいかい?」
「はい、もちろんです」
 気さくで優しい言葉にほっとしていると、ユリウスは急に笑い出した。
「不満ならお前も、名前で呼ぶ許可を貰えばいいだろう?」
 それはもちろんアメリアに対しての言葉ではない。だとしたらサルジュに対しての言葉になるが、彼がそんなことを望むはずがない。
 ユリウスは弟をからかっているのだろう。
 仲の良い兄弟の、じゃれ合いのような言葉遊びは微笑ましいが、できるなら恐れ多いので自分を題材にしないでほしい。
 そんなことを思いながらサルジュを見ると、彼はまっすぐにアメリアを見つめていた。
 宝石のような煌めきを宿す緑色の瞳に見つめられて、胸がどきりとする。
「私も、アメリアと呼んでもいいだろうか?」
「え。は、はい。もちろんです」