婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 当然のことながら、周囲からかなり注目を浴びている。
 できるならこのまま寮に帰してほしいくらいだ。けれどそれを言い出すこともできなくて、アメリアはずっと俯いていた。
 医務室は無人だった。でもユリウスはまるで自分の部屋のように鍵を開け、ふたりを中に招き入れる。ゆっくりと丁寧に寝台に下ろされると、ユリウスがすぐに呪文を唱えて治癒魔法を使ってくれた。
「これで大丈夫。他に痛むところはない?」
「はい。ありがとうございます。私は大丈夫ですが、あの、サルジュ殿下もお怪我を」
 サルジュも治してほしいと訴えると、ユリウスは険しい顔をして彼を見る。
「どこだ?」
「……」
 サルジュが答えずにいると、ユリウスの視線がアメリアに移る。
「あ、あの。右手首だったかと」
 そう答えると、ユリウスがサルジュの右手に触れる。治癒魔法が掛けられたのを見て、ようやくほっとした。