婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 馬車で待っている御者は、心配していることだろう。
「サルジュ様、そろそろ……」
 小声で促すと、彼は頷いた。
「そうだな。戻ろうか」
 アメリアの手を放して先に歩くサルジュは、もう王族の顔に戻っている。
 きっと、この顔を見る時間の方が長いだろう。それでも、たまにはこうしてふたりきりになれたら。
 そう思いながらその背を追っていたアメリアは、いずれ魔力が途切れて枯れてしまうだろう花のことを思う。
 王都の郊外で咲く小さな白い花は、かつての自分のようだ。サルジュと出会わなければ、きっと枯れていたに違いない。
 その白い花を、この花壇に植え替えてもいいのか聞いてみよう。
 そう思いながら、アメリアは懐かしい領地に続く空を見上げた。