「わたくしでよろしかったら、喜んで」
 そう答えた。
 マリーエとしては、仮の婚約を受けたつもりだった。
 それが、いつの間にか父親であるエドーリ伯爵も王城に呼び出されていて、婚約披露バーティのための話し合いをしている。
 いずれ解消される婚約である。そこまで本格的にしなくてもよいのではないか。
 そうユリウスに進言したが、彼はにこやかに笑ってこう言った。
「この婚約を仮のものにするつもりはないよ」
「ユリウス様?」
 驚くマリーエを、ユリウスは腕の中に抱きしめる。
「君の家族や友人を思う優しく気高い心に惹かれた。君となら一緒に生きていけると確信している」
「え、えっと……」
 困惑したマリーエだったが、ユリウスの腕の中から逃れようとは思わなかった。
「わ、わたくしも」
 初めての異性からの抱擁に頬を染めながら、何とか自分の気持ちを伝えようとする。ユリウスが伝えてくれたマリーエに惹かれた理由は、そのままユリウスに感じていたこともでもある。