婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 どちらも手を差し伸べたくないのだろう。
 忘れかけていた涙がまた滲みそうになった。
 王都に来てから、このようなことばかりだ。
 知り合いもいないし、何かをした覚えもない。それなのにどうしてこんなに嫌われているのか。
 自分に非があるのかと思ったが、理由がわからないのでどうしようもない。
 それでもこれ以上見苦しい姿は晒せないと、アメリアは自分で立ち上がろうとした。
「……あっ」
 けれど捻ってしまった足が酷く痛んで、立ち上がることができずにまた転びそうになる。
「危ない!」
 支えてくれたのはサルジュだった。
 彼も咄嗟のことで、つい利き手を差し出してしまったのだろう。その行動で負傷した右手に負荷が掛ったのか、声を押し殺す。
「サルジュ殿下。申し訳ございません」
 慌てて離れようとしたが、背中に腕を回されてしまった。
「動かない方がいい。足をくじいたようだね。医務室に連れて行こう」