弟のサルジュはあまり他人に興味がなく、周囲の騒ぎも気にしていないようだったが、それでも余計なトラブルを招く可能性がないとは言い切れない。
 だから何とかしなくてはと思っていた矢先のことだった。
 誰が教師に訴えてくれたのだろう。それに、サルジュの護衛からその件に関して報告がなかったことも気になる。
 話を聞いたユリウスは、自分の護衛を連れて弟の様子を見に行くことにした。
 すると、教室が何だか騒がしい。不審に思っていると、護衛のひとりが先に様子を見に行ってくれた。
「どうやら女子生徒同士で少し揉めているようです」
「揉め事か」
 今年の一年生は問題が多そうだ。ユリウスはそう思いながら、教室の中を覗いた。するとふたりの女子生徒が向かい合っているのが見える。茶色の髪をした小柄な令嬢と、綺麗な銀色の髪をした背の高い令嬢だ。
「あなたが先生に余計なことを言ったのね。そのせいで皆、とても迷惑しているのよ」
「用のない人が他のクラスに押しかけることが、そもそもおかしいのです。迷惑しているのはこちらの方です」
「……ひどい」
 茶色の髪の令嬢が泣き出して、周囲がざわめく。
 話を聞くに、どうやら銀色の髪の令嬢が教師に進言してくれたようだ。