「こちら側が冷害に悩まされているように、向こうにも大きな問題があるようだ。その解決法を探して奔走しているらしい。だから、学生の護衛では少し心許ない」
 ベルツ帝国が、こちらにまた手を出してくるのではないか。
 アレクシスはそれを心配しているようだ。
 だが、王立魔法学園にはすべての貴族の子どもが通っている。だからこそ、警備もかなり厳重だ。だから、理由は帝国だけではないのではないか。
 そう疑って問いかけると、アレクシスはあっさりと白状した。
「サルジュは研究に集中すると、飲食さえ簡単に忘れてしまう。しかもひとりの方が集中できるからと言って、護衛を置いて行動することも多い」
「……問題だらけじゃないですか」
 いくら学園は守られているとはいえ、ひとりで行動するのは危険だ。アレクシスもよく単独で行動していたが、それは彼が強いからだ。
「カイドが俺の護衛だった頃、いくら撒こうとしてもお前にはすぐに見つかった。サルジュもお前から逃げることはできないだろう。昔から面倒見が良かったし、お前がサルジュの傍にいてくれるなら、俺も安心だ」
 優秀だからと褒められても、あの頃の苦労が蘇ってきてあまり嬉しくはない。
 護衛など必要ないと逃げ回るアレクシスを、ひたすら追いかける三年間だった。