だがアレクシスは、護衛など必要がないほど強かった。
 彼は幼い頃、強すぎる魔力を自身でコントロールできなかったようだ。そのため、剣を持って戦うことでそれを解決していた。
さらに一番下の弟が誘拐されそうになったことをきっかけに、家族を守りたいとますます剣にのめり込んだ。今では正騎士よりも強くなっている。
 カイドも魔法なしの練習試合で、かろうじて一回だけ彼に勝つことが出来たくらいだ。
 だかそれ以来アレクシスには気に入られたらしく、学園を卒業してからも度々呼び出される。それも剣の相手をしろとか、火魔法と剣の組み合わせの実験に付き合えとか、他愛のない用事が多かった。
 今回もそんな話だろうと、あまり深く考えずに彼の元を訪れていた。
 だがアレクシスはそんなカイドに、第四王子であるサルジュの護衛騎士になるように命じた。
「サルジュ殿下の護衛騎士、ですか?」
 アレクシスよりも七歳年下のサルジュは、まだ学園の二年生のはずだ。学園自体が厳重に警備されていることもあって、在学中は同じ生徒が護衛として付き従うことになっている。
「それだが、ジャナキ王国から、ベルツ帝国の情報が入った」
大陸の南方に位置するジャナキ王国は、険しい山脈を挟んでベルツ帝国と隣接している。だが山脈の向こう側とは交流もなく、ほとんど情報も入らなかったが、それでも噂くらいは流れてくるらしい。