学園を卒業しなければ結婚することはできない。アメリアよりもマリーエの方がひとつ上だから、先なのは当然のことだ。
 けれど、あと二年は婚約者のままだと思うと少し残念に思う。
 婚約は約束ではあるが、確定ではない。アメリアとリースだって、十年も長い間、婚約者だった。ましてサルジュは王族だ。国の状況が変わってしまえば、解消される場合もある。そう思うと不安になる。
「早く結婚したい……」
 思わずそう呟いてしまい、ふたりにくすくすと笑われて我に返る。
「さあ、そろそろ開始の時間ね」
 そう言って、ふたりも自分の準備のために控え室を後にした。
 残されたアメリアはドレスを気にしながらそっと立ち上がり、白いドレス姿の自分を見つめる。
 結婚するなら、相手はリースだと思っていた。彼との未来以外を想像したこともなかった。