貴族ならば自分の感情よりも、領地の利益を優先するべきだ。
 曽祖父の話はその教訓として、アメリアも幼い頃から何度も言い聞かせられていた。
 それほど土魔法の魔導師は貴重な存在だった。
 そんなレニア伯爵家のひとり娘であるアメリアがリースと婚約したのは、五歳の時だった。
 リースはサーマ侯爵家の次男である。金色の髪に緑色の瞳をしていて、成長するとなかなか整った顔立ちになった。
 もちろん政略結婚で、互いの両親が決めたものだ。
 リースは、レニア伯爵家が切望している土魔法の魔導師である。
 次男とはいえ、貴重な土魔法が使えるリースを婿に迎え入れるには、多額の金が動いたようだ。
 辺境とはいえ広大な領土を持つレニア伯爵は裕福で、もう一度土魔法を取り戻せるのならば、と父はかなり奮発したと聞く。
 向こうは先代の当主が事業に失敗したこともあり、利害は一致したのだろう。