婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 エストとユリウスは結婚したら公爵になって、王族ではなく臣下となる。それはアメリアも知っていた。
 けれど正妃の子であるサルジュは、王太子のアレクシスが即位したとしても、王弟として王家に残り、この国のために魔法と植物学の研究を続けるのだろう。
 そんなサルジュの、王族の妻となる覚悟。
 好きだという気持ちだけでは、乗り越えられないものがある。
「ですが、私では身分も実績も……」
 地方領主の娘で、今となっては跡取りでもない。
 まだ学生で、何かを成し遂げたわけでもなく、サルジュの助手を務めているだけだ。
 不安そうな顔をしているアメリアに、サルジュは告げた。
「新しい水魔法を開発すれば、それが何よりも実績になる。それくらいのことを成し遂げれば、誰も身分のことなど持ち出さないよ」
「水魔法? あれはサルジュ様の……」
 新しい水魔法の開発は彼の研究で、アメリアはその手伝いをしているだけだ。