婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 けれどサルジュのことだから、たとえ休んでも一日中王城の図書室に籠ってしまっただろう。
 それでは休んだことにはならない。
 だから、何もないここに連れてきたのだ。
「そこまで疲れた顔をしていた覚えはないよ」
 困ったような顔をして笑うサルジュに、当然だと頷く。
「きっと誰も思わなかったのではないでしょうか。……私以外は」
「アメリア以外は?」
「はい。ずっと一緒にいますから、私にはわかります」
「そうか」
 サルジュは嬉しそうな、それでも認めたくないような複雑な表情で頷いた。
「とにかく少し休んでください」
 そう言って椅子を勧める。狭い自習室なので、机も椅子もひとつだけだ。
「アメリアはどうする?」
「私は床でも大丈夫です」
 そう言って、そのまま床に座る。アメリアが立ち尽くしていたら、いつまでも彼は休まないだろう。