婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。色々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。

 研究にのめり込んでいるときの、怖いくらい真剣な顔。
 望んでいた結果を得られたときの、嬉しそうな表情。
 好ましくない相手に向けられる、冷徹な厳しい姿も。
 徹夜をしてしまって、通学の馬車の中で眠そうに目を細める様子も見てきた。
 だからこそ今のサルジュが無理をしているような気がして、不安になる。
 それに王城に帰ったあと、彼が図書室に籠る時間が長くなったことも気になる。
 彼はずっとひとりで研究をしてきた。人が多く騒がしい研究所では、あまり集中できないのではないか。まして、彼と話したい者は多い。だから王城に戻ってから、自分の研究をしているのではないか。
 アメリアも夕食の時間まではサルジュを手伝っているが、その後はあまり傍にいられない。通いの頃ならまだしも、王城に一緒に住んでいる今となっては、たとえ図書室とはいえ夜遅くまで傍にいることはできなかった。